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「47歳のラストスパート、テクノロジーで革新するアフリカ・タンザニアを訪ねて」

公開日

2019年5月18日

執筆者

平良 尚也
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「47歳のラストスパート、テクノロジーで革新するアフリカ・タンザニアを訪ねて」

「47歳のラストスパート、テクノロジーで革新するアフリカ・タンザニアを訪ねて」

沖縄人は何によって沖縄人となるのだろうか。翼を広げて飛び回るように世界を縦横に往来し「大交易時代」の一時代を築き上げた沖縄人は、一体いつからヤンバルクイナのように飛べなくなってしまったのか。

ヨーロッパの大航海時代より前の14世紀から16世紀にかけて、東アジアや朝鮮半島、日本列島などへ貿易船を往来させ、琉球王国に繁栄をもたらした先人たち。ニライカナイへの関心に導かれるように、自然から学んだ知恵や、直感力を頼りに舟を出し、自ら活路を拓いた。16世紀、大陸から琉球へたどりついたポルトガル人は「武器を持たない平和を愛する人」とたたえ、そこに暮らす「レキオス」の存在を書物に記した。世界中を旅した司馬遼太郎をして「日本人のようで日本人ではない最も優しい民族」と言わしめた、温かみと気骨ある「沖縄人」がいた。

2019年5月、初めて訪れたアフリカ・タンザニア。ダルエスサラームから奴隷貿易の悲しい歴史をもつ島ザンジバルへと向かう高速船上で、荒波の中、溢れんばかりの人々を乗せ進む小舟に遭遇した。漁船のようでおそらく漁船ではない。ボートにしがみつくように乗る若者たちが、江戸時代に、国や領地を脱出して自ら信ずる道へと突き進んだ脱藩浪士と重なった。いつ転覆してもおかしくない舟船に乗る若者の原動力は、江戸なのか欧州なのかの違いはあれ、貧しさからの脱出であり、わが人生を生きたいという狂うほどの熱望の衝動に違いない。

江戸時代、産業先進国の軍事力を見せつけた黒船の来航が藩士を脱藩へと奮い立たせたように、現代のアフリカの彼らはスマートフォンを手にしたことで安全地帯と経済市場を目指し動き始めている。場所や時代は違えども、彼ら若者を突き動かすのは“テクノロジーの進化”と、それが生まれる“未だ見ぬ外地への憧れ”であることを再認識した。

閉ざされたた情報の中にいたときは、置かれた状況で従順に人生をまっとうしていたかもしれない。だが、彼らは世界に通じるスマートフォンという「窓」を通して多様な言論媒体に触れ、海外の市場の様子が手にとるようにわかるようになった。外に対しての扉が開き、生きる上での選択肢がうまれた。固定化した長老支配の待ち行列の中で窒息死するか、飛び出すか、まさに、命がけのルーレットである。

テクノロジーの進化がもたらす急速な社会構造の変化にまだ法や制度の秩序が追いついていない現状ではあるが、規範を超えて目の前の課題を解決する創造力は我々よりもすでに優っていることを実感した。

一足飛びの発展のただ中にあるアフリカだが、一方で搾取と略奪という資本主義の悪行の極みともいえる奴隷貿易の面影はいまだ残る。中でも、タンザニアの東、インド洋にあるザンジバルはかつて香辛料貿易とともに奴隷貿易の拠点となり、実際に奴隷の売買が行われていた「スレイブ・マーケット」が負の遺産として残されている。

この地には、日本人の絶望の歴史も隠されている。19世紀後半ごろ、主に東アジアや東南アジアに渡って娼婦として働いた「唐行き(からゆき)さん」とよばれる日本人女性が、ザンジバルまで送られていたという事実だ。ネットによると、女性たちは長崎県島原半島・熊本県天草諸島出身が多く、海外渡航には斡旋業者(女衒)が介在していた。とある。島原、天草といえばキリスト教弾圧の下で密かな信仰を貫こうとした隠れキリシタンが多くいた地。その下りから、自決を許されない彼女らが、家にとっては家計の負担を減らし、仲介業者にとっては利益を得るための、商売の道具にされたのではないかと想像した。

奴隷貿易による搾取の歴史と、テクノロジーの進化がもたらす革新。アフリカの大地に立ったことで、資本主義や自由主義という、人類社会の営みの根源とは何かということを、自分自身の内側から湧きあがる体感として得た気がした。書物やネットの情報を集めるだけでは導き出せなかった、現代につながる歴史の大局を目の当たりにし、俯瞰して物事を考える思考のスイッチが入った。では、これからアフリカは、世界は、沖縄はどこへどう向かうべきか。

自由主義につながる搾取という長い混沌と、革新の延長線上に、「医療」「教育」という平等と公平への道があることも歴史が指し示すところだ。

「平良、写真は撮らなくていいのか」。ザンジバルを案内してくれたガイドがしきりに指さす先にあったのは、病院だった。そうだ。沖縄でも、本土復帰後の1987年に初めて開催される国体に向けて、県内各地で陸上競技場や総合体育館、高速道路のインフラ整備が一気に進んだ。本土に復帰した証、発展の象徴を目の前にした大人たちが、子どもの僕に「みてみろ、競技場ができるぞ」と興奮気味に伝えてきた記憶の中の風景とオーバーラップした。

アフリカは近代化が加速する中で、これからますます医療の基盤や、教育設備が整えられていくだろう。現状の沖縄を眺めれば、その発展の過程に矛盾はない。だがそこには、沖縄の過去47年間の歩みにはなかった、テクノロジーによる革新が大きく寄与する。超高速大容量、低遅延、省電力、多接続という5G通信が現実のものになれば、距離を超えた質の高い医療・教育の相互供給によって、人々の暮らしの向上と、経済市場としての活力は絶大なものになることは容易に想像できる。

翻って、沖縄の現状に改めて目を向けると暗たんたる思いがする。政治の争点は、いまだ尚、医療と教育に代表される貧困問題である。地球の裏側で興っている革新と人々の挑戦に触れ、「沖縄は何故」という疑問が深まるばかりである。

参考記事

2019/5/6 日本経済新聞アラブ「社会契約」の終焉 経済低迷、上からの統治限界

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43874380Y9A410C1EA1000/

2019/02/08 GLOBE+

世界遺産ザンジバル島のストーンタウンで裏路地巡り

https://globe.asahi.com/article/12123071

2018/6/16 東洋経済

タンザニアのザンジバル島 奴隷貿易と「からゆきさん」の島へ

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/18253

2017/12/26 東洋経済

アフリカは「資本主義の限界」を見抜いている

https://toyokeizai.net/articles/amp/201812

2015/4/4 東洋経済

グローバリズムの誕生 世界を覆い尽くした金融資本主義の強欲

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/4333

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