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成城石井とは正反対の戦略で大成功…地味な高級スーパー「紀ノ国屋」がV字回復を遂げられた理由〜 競合するのではなく、「独擅場」をつくった
Published date
November 23, 2022
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◎過去最高「1日1000個」の売り上げをたたき出す
店内奥に設置された2台のオーブンから、甘い香りが漂ってきた。午前10時の開店からわずか30分。売り場前面の一等席に陳列されたアップルパイ(税別800円)の山がみるみるなだらかになっていく。
高級スーパー「紀ノ国屋」が沖縄初となる「特別販売会」を那覇市のデパートリウボウでスタートさせた9月2日、開店前までに焼き上げた最初の150個が、あっという間に客のカゴの中へと吸い込まれていった。
沖縄は、知る人ぞ知るアップルパイ王国。米軍統治時代の名残で本場アメリカの味に慣れ親しんだ県民は「アップルパイ」と聞いただけで、心躍る。紀ノ国屋が米軍基地内の職人を招き入れ、直接手ほどきを受けたレシピを受け継ぐという名物は「60年以上のロングセラー」を掲げ、販売会の看板商品に据えられた。
この日だけで販売個数は1000個を超え、それまでの最多だった1日600個の実績を大きく上回って過去最高を記録。その翌日から、沖縄は台風に見舞われ、2日間集客が思うようにいかなかった。にもかかわらず、10日間を通した販売総数は5100個に上り、紀ノ国屋の販売会史上1位の結果となった。
売れ行きの勢いに急ぎ追いつこうと、厨房に立ち続けた副社長・髙橋一実さんの腕には、あちこちに火傷(やけど)の水膨れができていた___。