地位協定の改定「米軍と自衛隊統合の観点ならあり得る」 元国防次官補、OIST活用した経済発展にも言及
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地位協定の改定「米軍と自衛隊統合の観点ならあり得る」
元国防次官補、OIST活用した経済発展にも言及
11月5日の米大統領選挙投票日に合わせてワシントンに滞在し、オバマ政権時代に国防次官補を務めた、笹川平和財団(USA)特別上級フェローのウォレス・グレグソン氏に90分間、話を伺いました。グレグソン氏は2001〜03年に在日海兵隊を統括する第3海兵遠征軍の司令官と在沖米軍トップの沖縄地域調整官を兼務し、在沖米軍を巡るこれまでの経緯にも詳しい人物です。
米国ではトランプ氏が次期大統領に選ばれ、日本では日米同盟の連携強化を強調する石破新内閣が発足しています。グレグソン氏の発言を通して、米軍の側から見る沖縄の「有用性」を振り返り、新政権がもたらす日本、沖縄への影響を探ります。同時に、米軍と関係の深い地域において今後、人的・経済的なネットワークの重要性が一段と高まっていくことにも話題が及びました。沖縄県の米ワシントン事務所について、経済・教育分野を絡めた新たな活動のあり方に関わる示唆があり、インタビューの発言をもとに私見を交え、沖縄県が取り得る施策の方向性についても提起します。(写真は筆者撮影)

◼️中台問題、対応変化の可能性
グレグソン氏は国防次官補に就任した2009年、普天間飛行場の移設先を巡り、鳩山政権の「最低でも県外」発言に直面した。その後の日米協議を主導し、北朝鮮核問題や中国の軍拡問題を担当するなど、在日米軍基地の変遷と現在地を観測する上で欠かせない人物だ。
トランプ氏再選による在日米軍基地の運用と中台問題への対応についてグレグソン氏は「同盟国の果たすべき役割」というトランプ氏のこれまでの発言や、選挙期間中の台湾の半導体と防衛費を巡る発言を踏まえ、「恐らく前回の政権時に国家安全保障会議に入っていた中国・台湾の専門家らが今回も入り、これまで(バイデン政権)とは異なる対応がなされる可能性がある。影響は出てくるだろう」とした。
日米同盟における目下の課題は言うまでもなく、中国の軍事的台頭にある。トランプ氏の台湾有事への対応は不透明なものの、中国に対する問題意識はバイデン政権と重なる面が多い。グレグソン氏は「われわれは実際、中国が何をやってきたのかを見てきた。知的財産権に対する保護をしていないこと、労働問題や尖閣、南シナ海の(海洋進出の)問題などもある。中国漁船が領海内に入ってきたり、与那国近海にミサイルが着弾したり、沖縄も無関係ではない。中国に対する認識が変わってきた」として、南西諸島における抑止力強化の重要性は変わらないとの見方を示した。
◾日米の基地統合は既定路線
日米両政府は「沖縄の負担軽減」を念頭に2012年の合意に基づき、在沖海兵隊約4千人をグアムに、約5千人をハワイや米本土に移す計画を進めてきた。だが、ここ数年の間に状況は一変している。米軍は昨年、中国の軍備増強に対抗するためとして、グアム移転計画を表明。22年3月にハワイに初めて発足した海兵沿岸連隊を23年1月、沖縄でも駐留部隊を改編して発足させた。数年以内にグアムにも置かれる見込みだ。
ワシントン訪問前に、私たちが沖縄の海兵隊の受け皿となるグアムの新基地キャンプ・ブラズを見てきたと伝えると、グレグソン氏はすかさずこう付け加えた。
「石破首相は、自衛隊をグアムに移転するという話をしていましたね」
石破茂首相が就任早々に掲げた「自衛隊と米軍の訓練基地の統合」は、グレグソン氏の過去の発言と照らし合わせてみると、米軍が日本に長年求めてきた既定路線だったことが浮かび上がる。
グレグソン氏は中国を念頭に、地理的な脅威が沖縄にとどまらず、日本全体に及ぶことを強調しながら、日米の軍事協力強化の中で自衛隊の活動をより確実なものにしていくことが必要との考えを示した。
憲法9条改正の議論について話題を向けた際には、「日本が第三国を侵略することや攻撃することはわれわれも望んでいないし、それは国内で議論するものだ。ただ日本には6852の島があって、その島を守るのは至難の業だ。訓練でも作戦上でも日米が統合されないと、(守ることは)難しいと感じている」と語る。
衛星による監視や正確に標的を攻撃できる長距離兵器の配備の面においても、「米軍と自衛隊が戦術レベルで統合されて、互いに攻撃される余地があればすぐに探知できるような体制が必要。昔のコンセプトで、盾(日本の専守防衛)と矛(米軍が担う攻撃)みたいなものは今は使えない」との認識だ。
◾️県民感情の変化に期待「米軍駐留は日本のため」
さらに、石破氏が意欲を示した日米地位協定の改定に話が及ぶと、「どんな意図で言ったのか関心を引くところだ」と言い、ここでも「米軍と自衛隊が統合できるようにするという観点で地位協定を改定するなら、あり得るかもしれない」と統合論に言及した。そうした考えの背景にあるのは、米軍に対する県民感情の変化への期待だ。
「今後、那覇と嘉手納、キャンプ・ハンセンなどで自衛隊との合同訓練が進むことになれば、人々にとって彼ら(米軍)が日本を守るために沖縄にいるんだという認識ができるのではないか。今は米軍はどこか別の所を守るために駐留しているという考えがあるかもしれないが、日本の防衛のためにいるという認識ができてくると思う」とグレグソン氏は語る。
だが、沖縄県が地位協定改定で求めているのは、事件事故の捜査権や、環境汚染の立ち入り調査を巡って米軍の「特権的な地位」に阻まれることの問題に関することだ。その点を問い直すが、「沖縄での訓練は地位協定上、制限された中でやっている」と淡々と話し、かみ合わない。
沖縄県が訴える課題の解決には「市街地からできるだけ離れた場所に基地を移転させること」、そして改めて「自衛隊と米軍が合同訓練を進めること」の必要性を強調するように繰り返したのが印象的だった。
「軍事戦略上の論理」と「生活への影響に対する住民の懸念」はこれまでも平行線だったが、その距離は今後一層乖離(かいり)していくのではないかと想像する。
かつては国民、県民の根強い反戦意識に支えられた憲法の制約によって、自衛隊の拡大抑制が一定機能してきた。だが、高まる中国脅威論にお墨付きを得たかのように、その建前が防衛力強化に突き進む米軍の背中を借りて、憲法の議論を巧みに避けた中で切り崩されつつあると感じずにはいられない。
「日米地位協定の改定」が、沖縄の負担軽減とは相反する文脈で語られ始めていることに注目すると同時に、「同盟としての対価」を重視するトランプ政権の下でも日米の連携強化の流れが続けば、防衛の人的負担を負う”米軍側の不利性”の観点から、沖縄県は一段と難しい対応を強いられるのではないかと私は危惧する。
◾️米国への影響力行使 グアムに学ぶ
軍事戦略上の話題から一転して、グレグソン氏は経済、教育分野における沖縄の発展可能性と期待についても、多くの私見を語ったーーーーー。

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