「洋菓子界の父」にお別れ エーデルワイス創業者、比屋根毅さん 全国から1千人参列

「洋菓子界の父」にお別れ エーデルワイス創業者、比屋根毅さん 全国から1千人参列

リポート

2020.09.02

「洋菓子界の父」にお別れ
エーデルワイス創業者、比屋根毅さん
全国から1千人参列


高級洋菓子ブランド「アンテノール」などを展開するエーデルワイス(神戸市)の創業者で、6月4日に82歳で亡くなった石垣市出身の比屋根毅さんのお別れ会が1日、神戸市内のホテルで開かれた。比屋根さんのもとで修行を積み、独立を果たした洋菓子職人は100人超え、「日本洋菓子界の父」と称された。比屋根さんを偲んで、全国各地から弟子や友人、企業の関係者ら約1千人が参列した。

比屋根さんは1953年に15歳で石垣島を出て、沖縄本島の洋菓子店に勤務。さらに技術を究めようと55年に大阪に渡り、それ以来67年間、洋菓子一筋の人生を歩んだ。

尼崎市内の7坪の店舗からスタートした洋菓子店は、現在全国で8ブランド85店舗を構えるまでに拡大。欧州の老舗メーカーとの業務・技術提携にも取り組み、国内を代表する洋菓子メーカーとしての地位を築いた。

職人の育成に尽力した功績も大きい。兵庫県洋菓子協会会長として、自社提携メーカーに他社の職人を派遣するなど、業界全体の底上げに貢献。故郷沖縄の若者も積極的に受け入れ、独立を後押しした。

2014年9月には、食品製造・販売の県内大手、オキコと共同出資でエーデルワイス沖縄を設立。「沖縄の菓子業界だけでなく、県経済の活性化に貢献したい」と、沖縄の素材を生かした観光土産菓子や、県民向けの洋菓子ブランドの開発にも取り組んだ。現在、エーデルワイス沖縄でパティシエ指導の責任者を務める山下裕士常務は、現役時代の比屋根氏から直接指導を受けた最後の世代だという。山下さんは「比屋根会長から託された洋菓子の技術を沖縄のスタッフに伝えることが私の使命。しっかりと役割を果たしていきたい」と話した。

お別れ会の会場には、創業からの歴史や数々の表彰歴のほか、比屋根さんがヨーロッパで買い集めた貴重な菓子道具のコレクション、愛車やゴルフグッズなどが展示され、多くの参列者が比屋根さんとの思い出に浸っていた。

会場中央に設けられた祭壇には、柔らかな眼差しが印象的な比屋根毅氏の遺影が飾られた。


比屋根氏の思い出とともに、エーデルワイスの歴史を振り返る特別展示の入り口


比屋根氏の愛車ジャガー


趣味のゴルフにまつわる愛用品やトロフィーを展示


比屋根氏がヨーロッパ訪問のたびに買い集めた菓子づくりの道具の数々。本社のミュージアム展示物の中から一部が紹介された


レシピがメモされた手帳や、1969年に近畿洋菓子コンテストで特別京都知事賞を受賞した作品、創業当時の写真などから、菓子職人として仕事に真摯に向き合う比屋根氏の様子が伝わる


菓子職人としての技術の高さを示す多彩な表彰歴


「忍耐と信用」の直筆の書が掲げられた執務室を再現した。


石垣島から沖縄本島、大阪、神戸へと渡り洋菓子職人として技術の向上を追求し続けた比屋根氏とエーデルワイスのあゆみは、日本の洋菓子界の人材、商品力向上の歴史と重なる。